読了
『三国志軍師34選』 (渡邊義浩:PHP出版)
てっきり「最強の武将10選」的な羅列ものかと思ってたけど、名士層という切り口から系統立てて後漢時代を切り取った一冊。これまでの三国志もので抜けてた視点が補完されて、今までなんとなくスルーしてたことでその意味と流れを知ることもあったりして、なかなか興味深い内容だった。なにげに最近読んだ三国志ものの中では一番。
例えば
・陳羣が荀紣に推挙されたこと。
・陳羣が曹操の後継者争いでは曹丕についたこと
・陳羣が九品中正制度を制定したこと
などは陳羣のプロフィールとして知ってても、それがどういう流れでつながるのかはピンと来てなかった。
官位が売買されるようになった後漢時代に、
学問(≒儒教)に秀でた「名士」と呼ばれる集団が
腐敗した中央政界外の人材プールとして機能していた。
↓
潁川群の名士グループに所属する荀恕uは、
そこから有用な人物を曹操陣営に数多く推挙した。
↓
潁川群グループと儒教の影響力の拡大に対抗し、
曹操は建案文学という新しい文化的価値を打ち出した。
↓
曹操の後継者として曹丕と曹植との間に対立が生じるが、
文学の面では曹植が勝っていた。
↓
「年長者が家督を継ぐべき」という儒の教えに基づき
陳羣を始めとする潁川群グループは曹丕を支持。
↓
結果、曹丕が家督を継ぎ、見返りとして
名士層の影響力を拡大する九品中正制度が制定される。
こうすると個別の事実が一つの流れの中で、
意味があるものに変わってくる。