読了

『サクリファイス』　（近藤史恵：新潮社）
珍しい自転車のロードレースもの。私は全然知らなかったんですけど、ロードレースってチーム制が基本で、そのチームの中で風除けとなってエースの体力を温存させる人、突出して相手のペースを乱す人、平坦地が得意なスプリンター、坂が得意なクライマーという具合にさまざまな役割分担があるんですね。エースの勝利はさまざまなサクリファイス（犠牲・献身）の上で成り立っている。チームの勝利を獲るか、自身の栄光を望むか、敵チームとだけでなく、個人の中でもさまざまな思惑が入り乱れる。だからこそ小説として描写して面白い。さらにこの本では数年前に起きた事故の謎が、ミステリー的要素として挿入されてくる。果たしてその真相は？　誰が、誰のサクリファイスとなっているのか？　まったく知らないジャンルなのにかなり楽しめ、ロードレース自体にも興味が持てる内容でした。