えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

読了

『黒笑小説』(集英社文庫東野圭吾
『快笑小説』、『毒笑小説』に続くショートショート短編集。
最初の1話はこれだけ見ると「アレ? これで終わり?」と呆気なく感じるけど、続く3作と合わせて、文壇の賞取りレースにまつわる悲喜劇がいろんな視点から肉付けされてゆく構成となっている。本格、社会派、スペクタクル、パロディと、芸の幅が実に広いが(しかもどれも巧い)、一貫して登場人物に対して常に冷徹とも言える距離を保って物語を紡ぐのが東野圭吾の作風。おそらくは自分を囲む作家仕事での人間関係や、自身の直木賞受賞、そして自分の感情すらも、常に頭のどこかで客観視し、冷めた目で観察しているのだろう。こんな風に「作家センセイ」の自意識を誇張した皮肉が描けるのも、そんな作者ならではななのかも。


ちなみに文壇シリーズとは別に収録された短編『白夜行シンデレラ』は、明言こそされていないものの、明らかに著者の直木賞受賞作でもある『白夜行』のヒロインがシンデレラを演じるとどうなるか、というセルフパロディとなっている。自己の感情を完璧にコントロールし、すべてを計算し尽くて他人を意のままに動かして目的を果たすこのヒロインは、おそらくは作者にしては珍しくお気に入りと言えるキャラクターだったのだろう。


P.S.
うーん。小説家じゃなかったら、なんかただのいけ好かない野郎っぽいなw