えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

『少女には向かない職業』  (著:桜庭一樹)


「あたし、大西茜13歳は、
 中学2年生の1年間で、
 人をふたり殺した。」



その前に読んでたのが『空の境界』という厨2テイストのキツい作品だったので、この帯のコピーを見た時には、またぞろ陰惨な話か、あるいは十代の自己陶酔話かと思ったんですけど、本編の書き出し最初の3行に


「中学2年生の1年間で、あたし、大西茜13歳は、人をふたり殺した。
夏休みに一人、それと、冬休みにもう一人
武器はひとつめのときは悪意で、もうひとつのときはバトルアックスだった」


とあって思わず吹いた。
戦斧て。


まぁ事実関係だけ追えばこの書き出しの通りの内容なんですけど、
不思議と印象に残るのは登場する少女たちの健全さで、
その、どこまでも肩透かしな感触が心地よかった。


そして健全であるが故になんだか肝心な所でカッコがつかない。
友達とたむろしててもしょせん狭い街の中のマックかゲーセンだし。
ゴスロリファッションでキメても世間の些事を達観しきれるわけでもないし。
男子はマンガみたいに良いタイミングで優しい言葉をかけてくれたりしないし。
人を殺したら死ぬほどブルっちゃうし−−−。


そのカッコがつかない情けなさというのが実に中学生らしいというか、
万人の中学時代に共通する普遍的な感覚であって、
(高校生とかだとしっかりしてるキャラクターならそれなりにカッコついちゃうんだよね)
それが殺人という特殊な題材を扱っていても
読者が身近な感覚を維持しながらすんなり読んでいける理由なんだと思いました。
それこそがこの作品の持ち味なんですよね。




でもネット見るとさぁ
「切ない少女の殺人」だとか「ミステリ」を求めて読んで
期待外れだと怒ってる人は意外と多いんですよね、コレ。
まぁ一方では「少女の壮絶な戦いの記録に感動」みたいな
それはそれで、ソレ違くない?っていうまっすぐ君の意見もあって
そういう層に対する反発もあるのかも。


まー大人から見れば中学生らしいカッコつかなさはノスタルジーの対象だけど
日常からの飛翔を求める現役中学生や高校生からすれば
さして楽しめないものなのかもしれないですしね。
でも「切ない〜」云々はバトルアックスの時点でおかしいって気づこうよ!




追記
http://www.gyao.jp/drama/shoujo/

ドラマ化された時のものらしいこの公式サイトを見てると
「無邪気な殺意」だとか「痛々しいほど切ない」だとか、
これまたこの小説を原作としたとは思えない凡庸なコピーが並んでいる。
見てないけど、どういうドラマだったんだ一体?