えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

『宇宙戦争』

「未見の事実による牽引力」と「結末を知った時のカタルシス」。以前にストーリー映画の魅力はこの二つが主に構成していると言ったけど、そういった意味ではこの作品は共に強力ではない。有名な映画のリメイク作品であるので多くの観客は事前に結末を知っていて未見の事実は少ないし、また「家族の別離→再会」という結末のカタルシスも予定調和の範囲内だ。だけどこの映画は充分に面白かった。それは「未見の事実の解明」ではなく、日常崩壊の描写そのものにカタルシスをおいているからだ。トライポッドみたいに人智の及ばない極めてバカバカしいものに現代文明が徹底的に破壊されるカタルシス。力の象徴たるアメリカ軍が徹底的に殲滅されるカタルシス。それは『ゴジラ』などの怪獣映画と通じるものがある。ドラマパートはほとんど時間軸の誘導役程度の意味しか持ち合わせていない。だけどもちろんその部分が作り込まれているか否かは作品の完成度を大きく左右する。その点さすがに怪獣映画ほどの破綻はなくキチンとつくり込まれていて気恥ずかしい思いはせずに楽しむことができる。
(怪獣映画はドラマパートや科学考証の破綻をある程度大らかに許容することを暗黙の前提としているので、その前提を共有しない人と一緒に見に行くと「こんな破綻したのが好きなの?」という目に晒されて気恥ずかしい想いをすることになる)


主演のトム・クルーズは「妻に逃げられた冴えない中年」を熱演していた。問題があるとしたら彼がこの役柄をこなすにはハンサム過ぎるってことぐらいだ。そこに映画的になんらかの意味が付与されているのかと見る柄が混乱してしまうほどハンサム。役の幅を限定してしまうほどハンサムなことは彼の俳優としての不幸であるのだろう。最近のトムはその自分の限界をなんとか乗り越えようとさまざまな役に果敢に挑戦しようとしているように見える。きっと彼は年をとってハンサムだと騒がれなくなってからも素晴らしい俳優でいてくれるだろう。