ケータイ小説
昨日の更新では
>世の中の不幸には2種類あって、
>一つは不幸な事件に出会うというもの。 例えば家族を亡くすこと。
>もう一つは不幸に生まれつくというもの。例えば家族が欠けた家庭で育つこと。
と書いたわけだけど、仕事柄ケータイ小説というものにいくつか目を通したのだが、そこで語られる不幸とは基本的に前者の不幸ばかりであるようだ。そして
>前者の場合は、事件までに形成された人格と交友関係で
>その不幸を乗り越えてゆくことになる。
とも書いたけど、不思議なことにケータイ小説の場合は主人公の人格形成についての掘り下げはない。掘り下げはおろか描写そのものが一切ない場合すらある。これでどうやってキャラクターの心情を想像しているのかと不思議に思うし、実際私が読んでも想像不可能なのだが、どうやらケータイ小説の読者は人格形成についての描写がない場合は無条件に自分を投影してキャラクターの心情を把握しているようなのだ。というかそれ以外に、あのようにキャラクターの背景への説明が不足し、心理描写の少ない作品に【感情移入】したり【感動】する方法はあり得ない気がする。
小説は他者の人生を想像し感情移入するものだが、ケータイ小説は「自分」が架空の人生を体験するものらしい。 『FINAL FANTASY』のようなキャラクターの立った劇場型RPGではなく、勇者に自分の名前を登録してプレイする古典RPGみたいなものか。となれば主人公の人格形成に関する描写を掘り下げないのも道理だ。余計なディテールを加えれば、その分「無条件の自己投影」は阻害されるのだから。
しかし、この「無条件に自己を投影」という点。少し怖い。そこには「人は一人一人違う」という大前提を持たない、同質性の高い人々を想像してしまうからだ。そして、そういう集団こそ異端者には残酷だからだ。
毒餃子
昼ぐらいに2chを見ると『報道ステーション』において
「中国側にとったら大変な痛手」
「浮かれた生活をしていたから」
と古舘伊知朗がコメントしたことが話題になってたんだけど、もう関連スレは全部落ちていますね。いくらなんでもこれはガセだろうと思ったんですけど、YouTubeでくだんの動画を見つけたら本当に言ってました。ビックリ。そりゃ「中国からの食料輸入停止を」なんて実現性0で威勢がいいだけのことを言う産経新聞もどうかと思いますが、いくらなんでもこれはない。
http://b.hatena.ne.jp/entry/7289838
状況の説明を終えた後の古館と加藤千洋(朝日新聞編集委員)のコメント。
古舘:これ中国側は大変な痛手ですねぇ。
加藤:そうですねぇ。これから真相究明がなされないといけないと思うんですけども、曖昧にするとこれ中国が不利ですよね。跳ね返りますよね。ですから日本と中国が協力して、迅速に真相を究明して、わかったら再発防止策を採ると、これが肝心ですよね。それから被害者の救済と、被害の拡大を今すぐストップする。そこですよね。
古舘:そうですよねぇ。今映ってますけども、中国側からどういう情報が出てくるかという点が・・・これだけ大きな工場でいっぱいモノを作っている、本当に真相がつまびらかになってくるかということもありますよねぇ。
加藤:あれこれ憶測でものを言うのも慎まなければならないと思うんですけどね、本当に原料段階の野菜残留農薬という形であったのか、製造過程で入ったのか、保存過程で・・・あるいは包装紙にも同じような物質が検出されたという情報もありますんで・・・。いろんな状況が考えられると思うんですけども。まずそこをハッキリとさせるということですよね。
古舘:確かに(規定)レベル以上の混入があったわけですから、残留というよりは工場内で殺虫剤として使ってそれが付着したということも考えられるわけですしねぇ。
加藤:そうですね。誤って入っちゃったのか、あまり考えたくないですけども、ある種の意図をもった人間がわざと混入させたという可能性もね、今の段階では否定されないわけですから、このへんはどうなのかというところをまずは突き止めないと。
古舘:冷凍食品というのは昔に比べればグンと味は良くなったと思いますし、値段が手頃で買いやすいというところもある。便利さを追求してゆく中で、当然のように食べている製品が、こういうことが起きてくると、今まで浮かれた生活をしていた部分はなかったのかというようなことも考えないといけないと思うんですよね。やはり物流が世界中から安く入ってくるというのが当然で、気がついてみたら日本の食料自給率は39%まで落ちているというこの現実があるわけですね。
国民の日常生活の中に浸透している中国産食品の中に毒が混入していたという、身近な恐怖を突きつけられるニュースを受けての第一声が「中国にとっては大変な痛手」というのは、一般国民の感覚とあまりにかけ離れているのではないでしょうか。というか、常人の共感し得る範疇すら超えている。ここまであからさまに、どんなことをしてでも中国におもねろうとする情熱は一体どこから来るのでしょうか。その不可解さがただただ不気味です。
事件性を含め真相の究明が待たれるという点はもちろん同意。
最後のコメントは、食料自給率の低下を懸念する結論となっているために一見まともに見えますが、世界中で中国産食品の安全性が問題視され、今回もその一例として世間に認識されていることは明白なのに、「世界からの物流」と話題を無闇に拡大し、焦点をボヤかして一般論として語る姿はかなり不自然です。また今回の事件とどう「浮かれた生活」が結びつくと言うのでしょうか。確かにやれボジョレーだミシュランだの騒いでいるのは浮かれた部類でしょう。しかし、安価な冷凍食品などは、むしろそうやって浮かれる人達とは対局の生活の中でこそ主に消費されるものでしょう。普段は「格差社会」だとしきりに騒いで弱者の味方として語っているのに、まさに格差の下方にとって身近な食材に関する問題で、「今まで浮かれた生活をしていた部分はなかったのか」とはよく言えたものだと思いました。
どういう見返りがあったら人はこんな風に振る舞うことができるのか。そういうことをしみじみと考え、うすら寒い想いをさせられる内容でした。
ちなみに
http://fukushimak.iza.ne.jp/blog/entry/468112/
産経記者による中国側記者会見のレポ